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思わぬ事故(伊織目線)

2009/10/18 03:08

修学旅行から1週間経って、中間テストも終えた後だった。

私は採点を終えたから、外で気分転換をしようと思ったから外に出ると

校庭には帰宅する学生が結構見える。

そりゃ、そうよね。今放課後だもの。

私はついでに帰りの挨拶をしようかなと校門に行くと、学年主任がいた。

「あ、お疲れ様です。」

「おう、お疲れ。」

私は学年主任と帰宅していく学生に別れの挨拶をかける。

理沙を秘かに探しながら・・・。

挙動不審にならないように、慎重に理沙を探していると、友達と帰っていく理沙がいた。

こうして理沙の顔を見られるだけでも嬉しかった。

こうして今日も無事終わるわね・・・と思ったのに。

校門の前は、横断歩道。

そこは車は通るけど安全スピードで通るようになっている。

だけれど、今日に限って突然バイクの操縦ミスなのか、

バイクから操縦手は転げ落ち、スピードあまって横断歩道にスピンしていく。

横断歩道の真ん中に、中2の女子が恐怖のあまりに動けていない。

まずい、轢かれてしまうわ・・・!

一瞬私はそう思った。それは皆もでしょう。

だけれど、理沙だけは違った。

理沙はリュックをすぐに捨ててその子を庇う。

そして、バイクは・・・理沙たちに衝突した。

たった一瞬のことだった。

手を伸ばす余裕もない位。

そして・・・血が飛び出る。

時がゆっくりと動いている。

私は目の前が一瞬真っ暗になった。

衝突した後、学年主任はすぐに救急車を呼んでいる。

私はすぐに理沙のもとへと駆け寄る。

「理沙、理沙!」

「ぅ・・・。」

理沙は生きていた。

そして「先生・・・庇った子は?」と聞いてくる。

馬鹿ね、相手のことより自分のことを心配しなさいよ。

私はそう思いつつ、涙を流しながら「大丈夫よ、怪我はないわ。」

そう、答えた。

「先生、泣かないで。私は生きるから。」

理沙はそう言うと私の涙を掬い取ったら少し微笑んで気を・・・失った。

少しすると、救急車が2台来て、理沙と中2の女子を運ぶ。

私は理沙の同伴者になった。

病院に運ばれる間、ずっと温もりがある理沙の手を握って、「生きて」と願った。

そして着くと理沙はすぐに手術室に運び出される。

でも、理沙のご両親は来ない。

だって、海外にいるのだから。

普通はすぐに飛行機に乗ってここに来る。

だけれど私は都合を知っているから、とやかく言えない。

だって、来たくても来れないという大変な立場であって、忙しさ。

ぜいぜい電話するのが精一杯。

きっと悲しいに決まっている。

そして、約12時間経ったら、手術が終わったのか、手術室から執刀医が出てくる。

「先生。」

私は祈りながら問いかけると、

執刀医は「手術は成功しました。あとは意識が戻るのを待つだけです。」と答える。

あぁ、生きてくれたのね。

そのことが嬉しくてたまらなかった。

「ありがとうございます、ありがとうございます・・・!」

私は頬に熱い涙を流しながら何度も何度も「ありがとうございます」を繰り返した。



私は理沙の手術が無事終えた後、

早速ご両親に結果を伝えると、ご両親は泣いて喜んでいた。

そうよね、愛する子供なんだから。

そして、その後校長から電話がかかって、

「理沙の世話に集中してあげて」と言われ、正式に休業することになった。

ちなみに校長に理由を聞いたら、理沙のご両親からの頼みらしい。



手術終了から3日目、

なかなか理沙が意識を目覚まない。

それでも私は手を握って祈っていた。

3日目の夕方、理沙が・・・目を開いた。

「理沙?」

「う・・・ん、先生・・・ここ、どこ・・・?」

理沙はきちんと戻ってきた、それが嬉しかったの。

「病院よ・・・貴女は事故にあったの。」

「そっか、私戻れたんだね、先生がいる場所へ。」

『先生がいる場所』、その言葉が私の涙腺を壊す。

「うっ、理沙・・・。」

乾いていた頬を熱い涙が潤していく。

「泣かないで、先生。」

そう言って、私の手を握り返す。

私は理沙と手を握ったまま、横になっている理沙を抱き締める。

「もう、どこにもいかないで。」

そう呟いた。

「えっ・・・。」

「もう、死んでしまうような無茶はしないで。」

あぁ、本音が漏れて行く。

「先生・・・。」

「私貴女がいなくなったらどうすればいいの?」

それでももう構わないわ。

「え?」

「貴女が好き、愛してる。だからどこにもいかないで。」

私は理沙のことが大切なのだから。

「せんせ・・・っ。」

私はついに言葉にしてしまった。

理沙が好きだということを。

だけれどそのおかげで

私と理沙は初めて心と心が通い合えた気がした。

好きは言葉にしてやっと・・・伝わるものだから。




理沙は意識が戻ってから約1ヶ月後、懸命なリハビリで学校に復活できた。

と、同時に私も復業。

実は、理沙のご両親から正式な申し込みを貰ったのよね。

理沙の家で過ごして欲しいって。

でもなんでこんなに?

疑問にもった私は理沙に聞いてみると、

「あぁ、それは私と伊織が付き合ってるって知ってるからかも。」と笑顔満面で答えてくれた。

・・・可愛い。

でも問題はそこじゃない。

理沙のご両親は正式に付き合ってるって知ってたようです。

っていうか、女同士でも構わないのね・・・。

っていうか、あれ?最近のことなのに。

そういうことで私の生活は一変していく。

そう一変していく、切なかった日々から、理沙を愛し、想う日々へと

続く

修学旅行(伊織目線)

2009/10/18 01:56
告白されてからまた早1年過ぎて・・・。

時は流れるのが早いものね。

卒業まであと何ヶ月か、指で数えられる程度だ。

私はそんなことを考えると、少し悲しくなって溜め息をつく。

だけれど、そんな私に神様からの贈り物が来た。

修学旅行で、部屋に入る人数が3人ほどオーバーだという。

伊織はすかさず、「岩井理沙とだったら私、一緒の部屋でもいいですよ。」と学年主任に言う。

学年主任は唸っていたが、最終的に許可をもらえた。

卒業まであと少ししか機会がないのなら、その機会でたくさん思い出を作ってしまいたいわ。

そうじゃないと・・・私情的だけど切なくて諦めきれないから。

そんな思いを胸に秘めて、修学旅行の夜を迎えた。

・・・

2人揃って部屋にいるけど。

前のこともあってか、やっぱり気まずいわね。

でもまたあまり心地良くない沈黙を壊したのは理沙だった。

「・・・先生。」

「なぁに。」

「先生は何で私を選んだんですか?」

「・・・布団を敷いてからね。」

私がそう言った瞬間、理沙はすぐに布団を敷き終えてしまった。

・・・ちょっと、早すぎじゃないの・・・。

「布団敷いたので教えてください。」

「ためで話してくれたらいいわ。」

「いいんですか?思いきりためで行きますよ?」

「ええ。」

「んで、先生、何で私を呼んだの?」

あぁ、本当に素直でいい子。

だからこそ私なんかでは釣り合わない。

ましてや、10つも上なんて。

私は少し切なさそうに微笑むと「・・・何ででしょうね。」と言った。

そしたら当然理沙からは、「えぇーっ!何それ!?」とブーイングを受けたけれど。

それでいいのよ・・・それで。

その後もまた理沙に「ねぇ、何で?」って言われて、「なーいっしょ♪」と返す。

その後、ブーイングを受けるというこの繰り返し。

そして私はごまかすためにフフフと笑ったら、

理沙は「何か怖い。とりあえず、私は寝るねー。」と言った。

意外と早いのね。

そう心で思っていたつもりが声に出てしまったらしいのか、

理沙が「ごもっとで。」と言って布団に潜り込み寝てしまった。

・・・ねぇ、理沙。

もしも、貴女に彼氏が出来たら・・・1回紹介してね。

きっとけじめがつけられるから。

そう祈りながら理沙の手を取って声を殺して涙を・・・流した。

何分経ったのだろう。

私は泣き疲れて、眠りに落ちた。



ちゅん…ちゅんちゅん・・・

雀の鳴き声が聞こえる。

もう、朝なのね。

けれど起きたくないわ。

今は・・・起きたくない・・・。

だけどそんな私を起こしたのはまた理沙だった。

「先生!先生!」

いつもすごいタイミングで引っ張ってくれるわね・・・。

「ぅ・・・。今何時・・・?」

私はおはようと言わないで時間を聞く。

おはようと言わなかったんじゃないの。

言えなかったの。

「えっと、6時半です。」

私は一瞬耳を疑った。

6時・・・半?

教務会議は40分からだったはず。

・・・非常にまずいわね。

私はまたもや声に出してしまった。

「・・・非常にまずいわね。」

「え?」

「あ、何でもないわ。」

「何でもなくないでしょ!?何があるの?」

「・・・教務会議。」

「・・・何分から。」

「40分。」

「・・・ぇぇぇええっ!じゃあ後はやっときますから早く行ってください!」

「ごめんなさい、後お願いします。」

伊織はそういうと着替え、化粧を済ませて、教務会議に出席する。

「伊織先生、おはようございます。」

「あ・・・おはようございます。」

「ん?珍しいですね、目が腫れてますよ。」

「えっ!」

「泣いたんですか?」

「いっ、いいえ!」

私は同僚にばれない様に必死で押し通す。

そんな感じで、教務会議を終え、部屋に戻る。

がちゃ、ぎぃー・・・

部屋のドアを開けて中に入ると理沙が携帯をいじっている。

私は理沙に「こら!」と少し叱ると

理沙は「ひゃっ!あ、先生・・・。・・・あぁ!」と慌てふためいて、携帯を背中に隠す。

・・・ばればれよ。

理沙の持っている携帯を取り上げると、

理沙は「あうぅー、返してー。」と必死に許し乞いをしてくる。

「修学旅行が終わったらね。」

「嫌だよぉー。今すぐ返してー。」

ご覧の状況のように、恐らく理沙はもういじらないと語っている。

でも、そのまま返すのも・・・。

うーん・・・、あ、メルアド聞けるチャンス?

そして、私は冗談交じりに「じゃあ、私とメルアド交換しなさい。」と言う。

理沙は当然呆気らかんな顔をしている。

・・・聞こえたと思うけど、わざともう一回言う。

「・・・聞こえなかったの?私とメルアド交換しなさいって。」

「え、あ、あの、何でメルアド交換?」

やっぱりそうよね。

理沙は理由を聞いてくる。

でも理由なんて言えっこない。だから話を茶化したわ。

「理由は聞かないで。とにかく、交換!」

そう言うと、理沙はすぐに「え、あ、はっ、はい。」と言って赤外線受信をスタンバイする。

私はそうやって理沙と赤外線通信でメルアドを交換した。

何気に電話番号も送信したのよね。

ちなみに理沙は『とりあえず、携帯返されてよかった。』とでも思ってるのか、

ほっとため息をつくと、携帯の電源を切って、バックにしまっていた。

・・・あぁ、やっぱり愛おしい。愛おしくてたまらない。

でも、我慢しなきゃ。私は理沙を絶対に振り回しちゃいけない。

そんなのを考えながらちらっと理沙を見ると、理沙が胸を手に当てている。

・・・私を見ながら。

その透き通った目で見ないで。

・・・心が奪われてしまうから。

そんな気持ちを振り切るために理沙に声をかける。

「どうしたの?」

すると理沙は少し笑って「何でもないよ?」と返したら視線を逸らした。

・・・もしかして、私のせい?

心の痛みがとれないまま、最終日が来てしまった。

朝、班別行動で生徒たちとは暫く離れる。

その間はせめて楽しもうと、同僚とあちこち見回った。

けれど、心はここにあらずって感じな状態で。

夕食を済ませた後、部屋に入ろうとドアノブに手をかけようと思ったら、

中から泣き声が聞こえる。

・・・理沙の声だった。

理沙が私の名前を呼んで泣いている。

でも私は行けない。

行けないの、ごめんね、理沙。

私は泣きやむまでずっとドアの横で待っていた。



・・・静かになった。

私はドアを開けて部屋の中に入る。

理沙は寝てしまっていた。

仕方がないわよね、あれだけ泣いていたら。

私は布団を敷いて、理沙を寝かした。

私はフッと窓を見ると綺麗な満月。

何でこのタイミングに満月なの。

泣いてしまうじゃない。

私はまた声を殺して・・・泣いた。

理沙・・・私は貴女が好きよ。

だけれど、貴女にはもっと世界を見てほしいの。

卒業したら私を忘れて、生きて。

私は理沙の寝顔を見ながら、そう秘かに祈った。

-----あぁ、恋ってこんなに切なかったかしら。

伊織はそう呟いて修学旅行は終わった。

続く

桜が舞い散るあの日、私は貴女と出会った(伊織目線)

2009/10/17 19:20
pipipi・・・

あらかじめタイマーを設定しておいた目覚まし時計が鳴る。

たんっ

伊織は手を少し勢い付けてアラームを止めるスイッチを押したら、

ベッドからむくりと起き上ってすぐに着替え、朝食…を済ます。

あとは・・・書類だけね。

伊織は書類とそれに関する資料をバッグに入れて、家を出た。

桜が咲き舞い散る通路、それは私の家の近くで。

しかも、そこを真っ直ぐに行くだけで私が勤めている学校に着く。

・・・何という好条件。駅も徒歩で5分だから、私にとっては最高に好条件だわ。

伊織がそこを歩いていると、前にいる新入生らしい人がハンカチを落とした。

伊織はすぐにハンカチを拾って、その人に駆け寄って声をかけるとその人が振り返る。

「はい?」

これが貴女との・・・出会いだった。




私は貴女と出会った後、何もかもが輝いて見えた。

これがいわゆる恋ってことかしら。

でも恋をするのは初めてではないのよね。

けれど、幼き日の胸のときめきが目覚めていく。

そして、私は奇遇にも貴女がいるクラスの英語教師担当になった。

それからはというものの、私は貴女のことで埋め尽くして、

気がつくと切なくなってしまう日々。

それから1年過ぎて。

何も変化がない、だからきっと貴女と私は平行線のままなのでしょう。

そう思って納得しようと思った。

だけど時はそんな私の気持ちを横目に、貴女を更に大人にしていく。

私はこれからももっと貴女の姿を見ていたいという我が儘の度に

何度も何度も自制しようとして。

なのに・・・これは残酷。

ある日、夕焼けが綺麗な放課後のこと。

私は貴女に突然呼ばれて、A組のクラスに向かうと、

そこには貴女が・・・いた。

そして、あなたと少し目が合った。

そのまま、私も貴女も逸らそうとはしない。

・・・いいえ、逸らせないのよ。貴女のその瞳が透き通ってきれいで。

静かな教室、長い沈黙を壊したのは・・・貴女のその言葉。

「・・・先生、私、先生が好きです。中1のあの時、私は一目惚れ・・・でした。」

あぁ、両想いだった。・・・でもごめんなさい。

私は・・・『YES』とは言えないわ・・・。

だって、私と貴女は教師と生徒という社会の立場だもの。

私が断ると貴女は俯いて一粒キラリとした雫を落とす。

きっと貴女は悲しい顔で泣いているのね。

・・・ごめんなさい。

私が「泣かないで。」と言ったら

貴女は「諦めません、私は、諦めないので、覚悟してください。」

と言って涙を流しながら笑ってその場を去って行った。

その後、私は誰もいない教室で静かに涙を流した。

あぁ、ごめんなさい・・・理沙。

でも、仕方がないのよ・・・許して、理沙。



続く